翻訳ミス
ぼーっとNature genetics電子版眺めていたら、日本語翻訳ミス見つけた。
http://www.nature.com/ng/journal/v47/n10/fp/ng.3390_ja.html
「伸長とBMI:バリアントのインピュテーション(補完)を用いた遺伝的分散の推定により、ヒトの身長とBMIについてこれまでに欠けていたわずかな遺伝率を明らかにする」
このタイトル翻訳ミスは、完全に論文の論調を間違えて捉えているので重大なように思う。ま、そもそも身長を「伸長」という変換ミスを放置プレーしてるレベルだけれど。誰も見てないだけかな。うちの分野では重要な論文ですけど。
原題はGenetic variance estimation with imputed variants finds negligible missing heritability for human height and body mass indexである。確かに訳しづらいけど、論文読んだ上で解釈すると「ヒト身長とBMIについての変異インピューテーションを用いた遺伝的分散推定により、「見つからない遺伝率」なんてほとんどないことがわかった」とでも言う感じか。だいぶ印象違うでしょう。。。
そもそもmissing heritabilityを固有名詞として扱っていないので、この分野を全く知らず翻訳してることはわかる。
この論文は、
- ヒトゲノム30億塩基中50万程度のマーカーである「SNP」を用いたGWASは身長などの量的形質や疾患発症を一部しか説明できない
- その大きさは、双生児研究による「遺伝率」よりもかなり小さかったので、SNPによっては埋められない遺伝率の分を「見つからない遺伝率Missing heritability」と称した
- そこで次世代シーケンサーなどで30億全部シークエンスすれば、「見つからない遺伝率」が埋まるのではないかという主張があった
- しかし本研究によれば、SNP + インピューテーションをやれば、双生児研究による「遺伝率」はほとんど埋まりそうであり、SNPによっては埋められない「見つからない遺伝率」の大きさはnegligibleである
- だからSNPを続けよう。次世代シーケンサーは金のムダ*1。
と言いたいわけ。
Nature AsiaにはGWAS系のチェック要員がいないのかな。