STAPについての感想

いやー終わった終わった・・・と、何回思ったかわからない本件なので、今後もまた何が起こるか、注視が望まれる。うそです。

WHAT問題

それがいったい何なのかという、ここではWHAT問題ということにすると、それは科学的に言えば2月〜3月の始めころでほぼ終わっていた案件で、大多数の良心的な科学者たちはその辺りでもう興味を失っていたことでしょう。それが科学的に本当かどうかを議論したい人というのが、科学者の中にいたとするとちょっと驚きかもしれない。分野によっては、科学としての感覚がだいぶ違うので3月以降も情報を欲していたようなものもあるかもしれない*1。それを含めても、納得するまでの期間に、事前情報の違いでばらつきが出る程度の話であろうと思います。

HOW問題

HOW問題も、まぁ、もうみなさんほぼ見当ついているんでしょう。僕もそう思いまっす。以前に書いたように、多分最終的に「真実」とかいうものが明らかになるかどうか、つまり捏造を企てたと断定できる証拠が得られるのかどうか自体がわからない。でもま、人生そんなもんだと思います。私はあまり興味ないのでそれはそれでいいです。

勉強になったことは、「どのようにしたか」にかかわらず、「それが何であるか」の時点で重大な科学への背信があったなら、その時点で研究者を断罪すべきこと。「悪意」というような、弁護士にいかようにでも転がされてしまうような不用意な言葉を、研究室規定に入れるべきではないこと、とかですかね。

あと、理研はこれだけの時間をかけておきながらこの点を明らかにしようという努力をほとんどしてない、のか?マジか。さっさと終わらせるか、ここ明らかにするか、どっちかにせいよ。まさかWHAT問題をまだ追いかけていたんですか。う〜む。。。

WHY問題

WHY問題のほうは、今もこれからも私は重大な関心を持ってはおります。

私にはひとつ気になっていることがあります。

CDBというのは日本のラボにありがちな、業績重視・年齢重視・男性偏重というピラミッド的システムに対してあえて挑戦するような面があったと思います。若手、(やや)業績不十分、などの積極的登用がとてもよく見られていたセンターだったと思う(すでに過去形で書いてしまった)。女性PIも比較的多かったでしょう。高橋政代先生だってそうですし。まあ、分野的には私は専門外なので、「ほかにも日本にはそういうところはある!」とかあるかもしれませんが・・(ただし、少なくともある程度の業績レベルがあるところにしぼって議論して欲しいですが・・・)

そこでつまり私が気になるのは、今回の事件を起こしたのはこの若手・業績不十分を性別を問わずに選抜するシステムそのものの問題なのか、それともそれとは関係ないところの問題なのか、ということを明らかにして欲しいということです。

前者ならば、CDBは驚愕するほどのレベルの業績を挙げてきたセンターですが、もはやその手法を捨てるしかない。つまり極普通に日本によくあるようなラボにすればいいでしょう。実際、CDB以外の日本によくあるラボは今回のような大捏造事件を起こしたことなんかないわけです(?)。今その方向性だと思いますが・・・

一方、後者だとするならば、CDBのこの特徴は、私としてはぜひそのままキープして欲しい。珍しいですからね。例えばですね、上田先生とか齋藤先生とかいうキラ星のような若手研究者がいたわけですけど、彼らの業績は(PI就任時点で言うと)不十分っていったってその不十分レベルが地方医大の教授(場合によっては帝大クラスでも)とかを凌駕するほどだったわけですけど、小保方さんはその程度の業績すらなくほぼゼロだった。でも私は外部の人間ですから、上記の二先生のように世界に名だたるような人しか知りませんが、ほかには小保方さんと同じくらいの条件で就任したPIもいた・・・のか??この辺りの状況が全く分からんです。そういう、うまくいかなかったフィルタがどれかをきちんと見極める作業をするとかですね。時折内部の人っぽい人から聞こえてくる、明らかに情実人事だったとする件。多分そうだったのでしょうけど、しかしそれもまた客観的に分解して、情実人事をシステムとして阻害するようにしなければいけませんでしょうね。

だいたい、冷静に考えると、小保方さんって、そもそもなんでPIだったのかわかんないです。あの研究内容は、通常は誰かボスの下で若手の研究員がやっているようなこと。この件は割と本質的ですよね。もし若山先生の下にいたころのようにボス - 研究員の関係なら、今回の小保方問題の多くの責任がボスのほうに行っていたと思われます。しかし、現実には小保方さんほかの登場人物がすべて独立に責任を負うPIだったということから、責任論がこじれている(いた)わけですけど。これもCDBがどう考えているのか、知りたいですね。こういうことが全く分からん。

結論

私はCDBの業績を剥ぎとってしまう改革になるようなのはできれば避けてほしいと思う。しかしもちろん、その業績を出していたシステムそのものが捏造事件を直接的に起こしていたなら、しょうがないがそのシステムは捨てるしかない。そこを見極めてほしいと思うのです。ダメだという判断が下った場合、今後理研にかかわらずほかの生命科学系ラボも、若手登用は見合わせるべきでしょう。

システムとしては、業績・年齢によるピラミッド型システム、権威ある研究者による若手選抜システムの他に、権威ある研究者の評価にかかわらず広く若手研究者に同等のチャンスと権限を与えるようなシステムも考えられる。

例えば、1番目・2番目のシステムは、現在の権威ある研究者(過去の偉大な研究をした人)が、新しい研究を理解できないという可能性がある、たとえば生物学分野が統計学・計算機科学を取り込むには、日本では結構時間がかかりました。3番目のシステムはこれに対してよいでしょう。

ちょうど2番目のシステムは小保方的人間に最も脆弱だとは言えます。しかし、1番目、3番目ももちろんそれぞれ問題はあるでしょう。1番目の問題が、新しいものが出なくなりがちになることは明らかでしょうし。例えば19世紀ドイツ・オーストリアの医学研究ってそういう印象。20世紀になって、ほとんど米英に取って代わられましたが、それがシステムの問題なのか、二つの大戦の影響に過ぎないのかは僕にはわかんないっす。そういう研究って、誰がやっているんだろう。

同じような問題意識をもってる人、いないかなぁ。小保方個人とかほんとどうでもいいんですけど。

*1:例えば数学などからは、そもそも「数学者」である時点で彼らは相当選抜された存在なので、そういう無能な人間が前面に出て活動しているような科学の分野があるということ自体がよく理解できないようであった