フランスには「理系」と「文系」とあとひとつある
わたしは「アメリカではこうで日本はそうではない。日本は異常だ」「ヨーロッパはこうなのに日本はおかしい」「おフランスはこんなにすごい」とかそういう考え方は基本的に大っ嫌いな人間であります。生理的に受け付けない。
でも、そうではなくて国際的に客観的に違いを見るのは有意義だと思っております。
なんの話をしたいかというと「理系」と「文系」のはなし。この辺りを読ませていただいたので。
http://d.hatena.ne.jp/dlit/20110323/1300908667
「理系と文系をわけるのはおかしい」っていう話は基本的にはアメリカ的視点ではないかと僕は感じるんですよね。あの国ないよね。別にこのご紹介した記事が、アメリカかぶれであると言いたいわけではありませんよ、念のため。
ここであたくしおフランス在住でございますので披露いたしましょう。フランスには三つあるのでございます。「理系」「文系」そして「経済・社会学系」(って件のエントリでも提案されてるか・・・)。
フランスの教育システムでは、中学校コレージュではすでに世の中の仕事について大体の教育を受け、自分がどういう大人になるかというのが固まっており、高校リセではそれに向かって道を進んでいくことになっているそうな。高校二年生プルミエールの段階でバカロレアが来ます。バカロレアとは日本で言う大学入試センター試験で、しかもセンター試験とは違いバカロレアさえあれば大学には必ず入れる、バカロレアがなければ(普通の大学の場合は)決して入れないってことで、センターより段違いの重みがあるようです。このバカロレアに三種類あってどれを受けるは試験よりはるかに前に決めていることだそうです(教育もそれに応じて行われるそう)。三種類のバカロレアとは、
- ひとつめは「bac S バカロレア・シアンス(バックエス)」で、理系。
- ふたつめは「bac ES バカロレア・シアンスエコノミク・ソシアール(バックウーエス)」で、経済・社会学。
- みっつめは「bac L バカロレア・リテレール(バックエル)」で、文系。
で、それぞれの資格に応じて、大学の入れる学部が分けられているということです。
普通に考えて、これが日本での「理系」「文系」にあたるものですよね。そして理系と文系の中間に、その橋渡し的な存在としてESを置いているということのようで。うまいね。
で、フランスというのははっきりした国で、 国家や企業のエリートを教育する、フランス教育システムの頂点に位置する「グランゼコール」に入るための準備学校に行けるのはbac S、ESのみなんだそうです。
ついでにその後
ところで大学ではなくグランゼコール入学を希望する学生は(原則的には)2年間の準備学校に入るのですが、これがクソ厳しいらしいです。このグランゼコール準備学校の学年の呼び名が、1年目は「maths sup」、2年生は「maths spé」。
「エリートとは数学ができる人間のことである」というフランスの考え方が伝わってくるようだ。ってなことを言ったら「そんなの当たり前でしょう。数学ができる人間が国を引っ張るのよ」みたいなことを言われて、そんなことは日本ではあたりまえじゃないなあと思った。
準備学校を出てもグランゼコールに行けるとは限らない。コンクール・ナシオナルという試験がまたあってそれを通ってようやくグランゼコール。やっぱ数学がかなり難しいらしいが、そのうえとんでもない教養やらなんやらも要求されて大変らしい。
おわりに
ぼくも理系と文系の二者択一の分け方はあまりよいとは思わない派だけど、それではそのような文とか理とかに分けるのをやめる、というよりは、この第三の「系」を置くということ。これ、単純ですけどかなりいいと思うんですけどね。どうなんでしょう。