中村祐輔シカゴ脱出関連

こんなん出てましたね、Natureに。

http://www.nature.com/news/genomics-ace-quits-japan-1.9952

前にニュースが出た時、はてなブコメで「朝日の事件が引き金か?」というコメントがいくつか有りましたが、それは理由の10%なんだそうなので、そこに関して興味が有る方がいるかなあと思い引用してみます。

Speaking to Nature from his office at the University of Tokyo, Nakamura says that the loss of government support for genomics accounts for 20% of his decision to leave. The opportunities at Chicago, which recently opened a Center for Personalized Therapeutics that will incorporate genetic information into routine clinical practice, contributed another 30%. And 10% came from a tussle with the newspaper Asahi Shimbun over the way a story linked him with a cancer-vaccine clinical trial in which a participant experienced an adverse reaction, he says. He is suing the paper and two journalists.

But the remaining 40% — the biggest single factor — is that he felt powerless at the government's new Office of Medical Innovation. A year ago, he hoped to resuscitate Japan's moribund pharmaceutical and medical-device industries, and redirect its ballooning health-care outlays from foreign pharmaceutical coffers to domestic companies. Nakamura laments that none of the cancer drugs approved by the US Food and Drug Administration in the past decade came from Japan, and he has pushed for innovations such as a national high-throughput drug-screening facility5. He has also tried to persuade the government to integrate his plans into the economic stimulus programme that followed last year's earthquake and tsunami. But, he says, flatly, “my proposals were not taken”.

試訳はこんな感じですかね。

中村が東京大学のオフィスからNature誌に語ったところによると、政府がゲノミクスをサポートしないことは、日本を去る決定をした理由の20%を占めるとのことである。最近、遺伝情報と通常の臨床業務を結びつける「オーダメイド治療センター」を開設したシカゴ大学における機会を見つけたのが30%。10%は、副作用を起こした参加者が発生したがんワクチンの臨床研究と中村とを結びつけるストーリーを組み立てた朝日新聞との争いによるとのことである。中村はその新聞と二人のジャーナリストを訴えている。

しかし残り40%の、最大で単一の因子は、政府に新しくできた医療イノベーション推進室において無力感を感じたことにあるという。一年前、彼は日本の瀕死状態の製薬・医療デバイス産業を復活させ、肥大する医療費が外国の製薬会社に支払われるのでなく、国内の会社に支払われるようにしたいと考えていた。中村は、過去10年間、アメリカの食品医薬品局(FDA)で認可された日本製のがん治療薬はひとつもないことを嘆き、国立のハイスループットの薬剤スクリーニング施設の設立といったイノベーションを推進していた。中村はまた、昨年の震災と津波を支援するための経済刺激プログラムに、彼のプランを含めるよう政府を説得しようとした。しかし、彼が力なく言うには、「私の提案は受け入れられなかった。」

Nature誌上で微妙な感じで名前を挙げられてしまった朝日新聞さんは、ご愁傷さまです。まっ、官房機密費問題の時エコノミストに「日本のマスコミは賢い猿だ。見ざる、言わざる、聞かざる」*1だなんてこれ以上ないくらいコテンパンにバカにされたあとなのでもう下げる評判もないんでしょうが・・・

あと個人的に面白いなと思ったのは、がんセンターの柴田龍弘先生、東大の松本洋一郎先生といったバイオ研究者系のひとびとが共感し惜しむようなコメントをよせているのに対し、「科学技術政策研究所の伊藤裕子」先生、「政策研究大学院大学の角南篤」先生*2、というなんたら「政策」なんたら系の方々が一貫して強い調子で批難しているのが印象的でした。

おそらく中村先生は、科学政策系の研究者の「場」を乱してしまったのかも知れませんね。まあ科学政策系の研究者の方々には、中村先生を批判してる暇があるんだったらポスドク問題なんとかしろよといいたくもなりますが・・・

実際のところは、前にどこかのブコメに書いたとおり、中村先生の政府内での立ち位置は、仙石さんに取り上げられて中心に据えられ、仙石さんの没落と共に没落した、という感じで民主党内の内ゲバの犠牲になった方だと思います。

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追記:Nature誌からの引用文内「過去10年間、アメリカの食品医薬品局(FDA)で認可された日本製のがん治療薬はひとつもない(原文 none of the cancer drugs approved by the US Food and Drug Administration in the past decade came from Japan)について、当コメント欄で疑義というか明らかな誤りの指摘がなされていますのでそちらも御覧ください。

*1:http://www.economist.com/node/16167646

*2:ぼくこの方々のことはよく知らないので英語名からググッて調べただけなのでもしかすると違う人の可能性あります