最近のネットやマスコミ上での医者の発言・・・
一部にとんでもないのが混ざってる。どうして彼らは、統計学を勉強したこともなく、その「P値」なるものの理論的背景を知りもせず、「統計なんて言う数あそびで人の生命や病気が理解できるわけがない」、という直感的解釈を肯定してしまうのだろう。そのような見方は、知性に欠けていると言わざるをえない。
ただひとつ言いたい。知的専門職の人間が、例えば統計学とか疫学を批判したいならば、まずその統計学を勉強してからにせよ。教科書も読まずに批判するのは知的専門職の人間がやることではない。不勉強なくせに、医者という肩書きが余計な権威を与えてしまい、有害無益である。
そりゃ僕だって数学科出身ではないので、核心まで完全に理解出来ているわけはないし、数式を追えていることは追えていても、教科書なしで一から検定を組み立ててみろと言われて多分まだ自信はない。また、ベイズ統計学*1についてはまだまだ勉強中である。それでも僕は医者として臨床の場で、EBMという医療の台頭を目の当たりにし、研究においては応用統計をバッチリとやるはめになり、そして確信している。やはり医療の結果は確率分布であり、医療の方針は統計学的推論にしたがって決定されるべきだ。これは間違いなく、医療におけるパラダイムの転換なのだ。そして欧米においては既にパラダイムの転換は終えており*2、日本以外のアジア諸国も欧米にならってそうしているように見える。
実際ホメオパシーに対する世界的なレベルでの排除というのも、このパラダイム転換を抜きにしては語れない。これがあったので思想的統一が既にあり、統計学的に効果を是認できなかったこの代替医療の排除というコンセンサスが固まったものと見える。
もう一度言ってしまおう。
君たちなんで統計の教科書の半分も理解せずに、統計学をあからさまに罵倒できるの??
不思議なことだ。彼ら自身は、病気のことを知らない素人が医療を罵倒したら頭に来るクセに。こんなのが許されるようではこの国の知性は劣化してしまう。