高橋政代先生が怒っていらっしゃった

STAP論文がリトラクトされました〜。長かった、と思われるかもしれませんが、感覚からすると、一般的な科学論文のリトラクトまでの時間で考えると早かったのでは?あの長寿GWASのScience論文とか、めちゃくちゃだったのに1年かかってたしなぁ。まあこっちは捏造とかではないけど。

ところで高橋政代先生が怒っていらっしゃいました。あとで方向修正されたそうではありますが。

http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140702_2/

高橋政代先生は常に、今回の世界初のiPS細胞臨床研究が、今後数十年に渡る(かどうかわかりませんが)iPS細胞の臨床応用のための研究発展の全てに重大な影響をあたえることを自覚していらっしゃる方です。

個人的に存じ上げているわけでもないのでわかりませんが、講演などでのご発言から考えるに、おそらく和田心臓移植を念頭に置いているのだろうかと思います。

和田心臓移植は、ご存じの方も多いでしょうが、国内初の脳死心臓移植でしたが、脳死判定など様々な点に疑問があり、国内初の心臓移植という名誉を得るために強行した人体実験だったのではないか、という重大な倫理的な問題が指摘されたため、脳死心臓移植そのものの信用性が完全に失われ、その後30年以上にわたって日本国での心臓移植件数がゼロとなったことの主要な原因であったとも言われる、有名な事件です。ちなみに欧米ではその間も活発に行われていた。「心臓移植」という医療行為自体はまっとうなものだったわけですけれども。

結果としては和田先生は刑事事件としては不起訴処分となり、その後女子医大に移って医者人生を全うされました。

小保方さんが本気で人をだますための捏造をしたかどうかが(ほとんどクロ判定に近いものの)未だ100%確実ではないことと同じように、和田心臓移植もあれが脳死ではないものを無理に脳死としたのかどうかは100%はわかりません。

しかし脳死判定の手続きをしっかりやらなかったことだけは確かです。

手続きの問題なわけです。

そしてそれは本質的な問題で、疑義を抱かれ、信用を失うには十分なわけです。今回の小保方さんと同様に。



であることから逆算すれば、今回の理研の対応ですが、和田心臓移植と対照させると、脳死判定をきちんと行わず脳死心臓移植をやったという重大な手続き上の問題があり、その他にもさまざまな疑問が噴出している(本当に今回の小保方さんの件と似てます)にも関わらず、「脳死だっかどうかは調べてみないとわからない」とか言ってるような状況だと考えられます。

そして、和田先生自身はそうやって刑事事件でも不起訴になりその後女子医大の教授になるような栄誉に服したとは言え、患者さんに行う心臓移植自体はストップしたわけですが、それと対照させるに、理研は小保方さんはまぁどうでもいいとして笹井先生や竹市先生の名誉をいささかなりとも回復させようと言う?対処をするあまり、CDBそのものの信用が失墜し、ついにはCDBがおこなった臨床試験であるiPS試験の信用性が失われることによってiPS臨床応用が数十年にわたって停滞する(日本だけで)・・・なんてシナリオが考えられなくもありません。

STAP細胞が存在したかどうか」は、再現性を中心に置く科学の世界では検証可能な仮説ではあるとは言えるものの、「小保方さんが捏造をしたかどうか」については、「和田心臓移植のドナーが脳死であったどうか」とほぼ同じレベルで、事実として完全に明らかになることはない可能性があると思われます。

しかし和田心臓移植の件において、「本当に脳死でなかったかどうか100%わからない」ことによって免責されることはなく、手続き上の重大な瑕疵により正当性を証明できなかったこととその他各種の疑惑をもって信用が失墜したことにより、心臓移植がストップした(とされる)わけです。

ですから手続きの問題それそのもの(+噴出する各種の疑惑)をもって、患者さんに医療行為ができなくなったという歴史を日本の医療はすでにもっているわけです。

心臓移植の場合は疑惑と信用が失われた医療とが同じ人でにより行われたのに対し、今回は、同じCDBではあるが、疑惑はSTAP、信用を失うかもしれないのはiPS臨床応用、ってことで、そこに少し飛躍はあります。とはいえ、その医療行為をストップさせるのは「信用の失墜」であるとした場合、小保方さんを手続きの問題のみを理由に確実に断罪できれば、信用失墜は小保方さんとSTAPにとどまりますが、現状では信用が失墜したのはCDBや理研であると考えるならばスジが通るとも言えるように思います。

私としては普通に理路整然としていると思いますが、理路がわからないとおっしゃっているブコメを読みましたので、ある視点からの説明を試みましたです。

理研の対応は相変わらずヘンですが、個人的には、前回の不正の件で裁判で理研が負けてしまったことを過剰に意識しすぎてるんじゃないかなぁと感じますかね。まあ、だからといってそれで不正に対する対応が緩くなったら、そんなことはしてはいけないわけだから、批難されてしかるべきだとは思いますけれども。