雑感(フランスから)

まためいろまさんが猛威を振るっているようだったので感想を書きたくなった。

乙武洋匡オフィシャルサイト

の件です。

障がい者差別はいかん。フランスも曲がりなりにも欧米先進国なので、障がい者差別は(少ない)だろう。でも別に日本も障がい者差別の解消自体は進んできていると思う。だが日本のほうがやや遅いだろう。しかしそれは工業化の順番にすぎないと私は思っている。

ここで私は思うのだ。日本と欧州の違いは何か。つうか、海外在住日本人の感覚のちょっとズレ加減はいったいなんなのであるか。これは感覚的なものだけど、私はこう思っているのです。

日本人は、「かくあるべし」という規範に沿おうとする。あらゆる面において。

欧州人は、「こうであってはいけない」という規範に沿おうとしているようだと私は思う。で、「こうであっていけない」以外は自由で良い、みたいな感じで。

ではないかな〜、と。

そういうわけなので、例の乙武さんと店長の場合。

日本人ならば、「乙武さんはこう振る舞うべき」「店長はこう振る舞うべき」のあいだの論争になるわけである。なっている。あれやこれや、あっちはアレが悪い、こっちはこれが悪い、の論争になる。

でも欧米からすると、どちらもどう振舞っても基本的には自由である。しかし「障がい者差別はしてはいけない」。いっぽう乙武さん側に「〜してはいけない」プロトコルに引っかかる点は特にない。障がい者は店に事前に通告したほうがよいことはよいのかもしれないが、それをしないことが決定的な瑕疵である、という法的根拠はないでしょう(当たり前か)。この際、決着をつけるにおいて、「したほうがよかっただろうな〜」という玉虫色の意見は出ない、ようだ。だって自由じゃん。つまり乙武さん側に「〜してはいけない」ことをしてしまった点は一つもない。であるので悪いのは店長だ。

そういうわけなので欧米在住者が脊髄反射的に「あれはよくない!」といきり立ってしまうのはこういう欧米型社会の振る舞いを身につけたがゆえであると私は思うのです。さらに欧米在住者が、ほんのちょっとも乙武さん側の行動への注文をつけることを許さないのも、単に思考回路の違いなんじゃないかなと思うんですよね。

ネット上では、「かくあるべし」論からの批判と「であってはいけない」論からの批判が入り乱れてわけわからんことになってるように思う。

さて、日本的考え方と欧米型考え方、どっちがいいのかということは決着ついていないと思います。私自身は欧米のように、「これはダメ、あとは自由」のほうが好きですが、また日本的考え方が特攻隊やブラック企業を産んでんできただろうと思いますが、しかしそれはまた工業化や高度経済成長を成し遂げた理由でもあろうし、日本は絶対それをやめるべき、とまでは確信できない。そうなったほうが日本人全体が幸福になるという確信はないです。

でも検討する価値はあると思う。

めいろまさんもウンコみたいなことばっかり言ってるけど、あれはあれで真剣にいろいろ心を痛めて考えてるんじゃないかな、うん、きっとそうです。


ところで「店主の対応、態度」を問題とした意見がいくつかありましたが、うーん、それって、そういう人達はフランスでの食事はできないだろうなって思う。一本1万円以上のワインを頼むような店にいくつもりなら別だけど。フランス人は、スーパーの店員だろうとレストランのギャルソンだろうと地下鉄の駅員だろうと、誰でもが気に入らないなら客にキレて罵倒するくらい朝飯前である。

すなわち、いくら横柄で不遜で見下すような態度をとったとしても、それは欧米標準としてありえないこと、ということはない(多分めいろまさん、カリフォルニアさんあたりもこの点は問題としていないはず)。

で、あるが、障がい者差別的なことだけは(多分)言わない。人種差別的なことも。ただし、家族連れを追い返すくらいはするかもしれん。

それがなぜであるかの理由はすでに説明した次第。

まああんまり集団まるごとラベリングするのは知的でない行為だし、人それぞれ、っていうところも多いですが、でもやはり集団として分布としての違いが観察されるだろうと私は思っています。