遺伝統計学における「因果律」の特殊性

※ 文章のインパクト?の問題から2回ほど書き直しましたが文意は特に変化ありません。

今回のエントリは、下記の優れた記事をもとに、主にid:takehiko-i-hayashi さんやid:what_a_dude 先生、その他別分野の方のご意見を伺いたいというものです*1

http://d.hatena.ne.jp/takehiko-i-hayashi/20111222/1324487579

僕は基本的に疫学の方面から、因果関係や因果推論については反事実モデルを中心に理解しているにすぎないので、より広がりのありそうなお話、とても強く期待しています。

ところで、疫学ではなく遺伝統計学のほうの話で、これは教科書に書いていることではなく(あるかもしれないが記述は見たことがない)、遺伝学者での雑談として「そうだよねえ」と言っていたことなのですが、

統計学者を悩ます因果律の問題は、遺伝統計学における遺伝的関連・連鎖においては問題にならない。これは遺伝学の特殊な性質である。

というもの。なぜなら、DNA(遺伝因子が刻まれているもの)→ RNA → タンパク → ・・・ → 病気、というのはほぼ絶対的な関係なので、かならず遺伝因子が原因、病気が結果となるはずだから。「ほぼ」と書いたのは、レトロウイルスなどによる組み込みや放射線や癌などによる後天的な変異があるからだけれど、「遺伝的関連・連鎖」が表すものはそういった後天的変異によるものではないので。

どうなんでしょうね。そうなんだと思ってるんですけど。

ということを書いたのは、上記エントリもそうだけど、反事実モデルの教科書の記述などにも、「これまで統計学においては因果関係は扱わないことになっていたが・・・」というようなことはよく書いてあるが、遺伝統計学は扱ってるんですけど・・・と疎外感を感じることがあるもので(もちろん意味合いは異なりますが)。そのように疎外的に扱われる理由は、遺伝統計学が他の統計学応用分野とはかなり独立に発展してきたと思われるところがあると思っている。なにしろ遺伝統計学においては、尤度比がlog10で表されるというくらい孤立していたりする。遺伝統計学創始者はフィッシャーで、現代統計学の創始とほぼ時期を同一にすると思われ、そのため孤立して発展してきたのかもしれない。

*1:先生とかさんとか適当につけました。肩書き的におかしかったらごめんなさい